これまでのあゆみ

演奏会詳細

第9回定期演奏会

日時 2005年9月19日(月・祝) 14:00開演
会場 三鷹市芸術文化センター 風のホール
曲目 モーツァルト/交響曲第32番 ト長調 KV318
レスピーギ/リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲
ベートーヴェン/交響曲第3番 変ホ長調 作品55 「英雄」

曲目解説

モーツァルト/交響曲第32番 ト長調 KV318
曲目解説∧こじつけ的2*5乗(=32)の数的性質
F=(9/5) C+32 これは我々が慣れ親しんでいる摂氏と華氏の関係を表す式ですが、華氏32度(=0℃)は氷の融点です。32番の1楽章ではモーツァルトの交響曲では初めてバロック時代の伝統である「バッソ」がファゴット、チェロ及びコントラバスのための独立したパートに分解され斬新な音色効果を生み出しています。つまりこじつけ的には、低音部のバロック伝統からの解放という意味において32番はモーツァルトにおける低音部の融点であると言えるのかもしれません。また32番は、それ以前のモーツァルトの交響曲とは違った完熟した音色を聴き取ることができ、作品番号が付けられているものとしては最後の序曲スタイルの交響曲です。従って注目されることは少ないですが重要な曲であると言えます。32分音符、32バイトといった単位に使われることから、個人的にはこの「32」という数字に何となく何か確かな響きを感じ、完全性を勝手に見ていましたが、実際には「32」の約数(32を除く1、2、4、8及び16)を合計すると31となり、残念ながら完全数にはあと1つ足りない不足数なのです(因に28は完全数(1+2+4+7+14=28)。
曲目解説に戻りましょう。モーツァルト(当時23歳)は、この交響曲を1779年に完成させています。全体がト長調の急〜緩〜急の3楽章(アレグロ・スピリトーソ、アンダンテ、テンポ・プリモ)構成ですが、各楽章間が切れ目なしで演奏される、いわゆるイタリア序曲形式でつくられています。ホルン4本を含む充実した編成ながら、規模が小さく楽章も連続して演奏されることから、何らかの序曲として作曲されたという説が唱えられています。1楽章はユニゾンの激しい動機と静かな応答という対比原理の主題で始まり、再現部を期待するところに牧歌的な2楽章が挿入され、1楽章の再現部とも言える Tempo I の3楽章に休みなく突入します。(オーボエ・M)

レスピーギ/リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲
オットリーノ・レスピーギ(1879-1936)は、イタリア・ボローニャ生まれの作曲家で、代表的な作品としては、「ローマ三部作」と呼ばれる「ローマの噴水」、「ローマの松」、「ローマの祭り」という3曲の交響詩があります。彼は、自ら作曲した曲の他に、他の作曲家の作品を編曲した作品も多く残しました。「リュートのための古風な舞曲とアリア」と呼ばれる3つの組曲も、その編曲作品の一つです。「リュートのための」とあるとおり、素材として用いられている作品は、リュートと呼ばれる、ルネサンス時代によく演奏されたギターの前身のような楽器のために書かれたものです。第1組曲と第2組曲は、弦楽合奏のために書かれた曲です。この曲は、1931年に作曲され、1932年1月に、イタリアのミラノ音楽院にて、レスピーギ自身の指揮により初演されました。
第3組曲は、以下の4つの曲からなっています。
1曲目「イタリアーナ」原曲は、作曲者不詳の16世紀末のリュート曲です。曲は3つの部分から成り立っており、美しい、繊細な音楽です。
2曲目「宮廷のアリア」原曲は、バプティスト・ベサールという16世紀の作曲家の書いた複数の作品で、調性も拍子も異なる各部分が、巧みに組み合わされて作曲されています。繊細な音楽と、心躍るような音楽とが組み合わされた作品です。
3曲目「シチリアーナ」原曲は、作曲者不詳の16世紀のリュート曲で、舞曲とその2つの変奏というシンプルな構成になっています。この曲は現在でもリュートで演奏されており、この第3組曲の中でも、単独で演奏される機会の多い作品で、素朴で繊細なメロディーからなっています。
4曲目「パッサカリア」原曲は、ロドヴィーゴ・ロンカッリが1692年に出版したパッサカリア(バロック風の変奏曲)です。今までの3曲とは異なる、重厚で壮大な音楽になっています。 参考文献:音楽之友社・ミニチュアスコア 解説(沼野雄司著)(ヴァイオリン・H)

ベートーヴェン/交響曲第3番 変ホ長調 作品55 「英雄」
交響曲史上の大革新作と言われるこの曲は、ベートーヴェンが34歳の時に作曲され、今からちょうど200年前の1805年に初演されました。ナポレオンへ献呈すべく作曲されましたが、ナポレオンが皇帝に即位したという知らせを聴いて激怒し、献呈辞が書いてある表紙を破り捨てたという有名なエピソードが伝えられています。しかしウィーン楽友協会に現存する総譜には、表紙を破り取った形跡はなく、「ボナパルト」という題名とナポレオンへの献呈辞がかき消され、「シンフォニア・エロイカーある英雄の思い出に捧げる」と書き直されています。
この曲の主調である変ホ長調は、しばしば「英雄の調」と呼ばれます。同じ変ホ長調で思い浮かぶのは、シューマンの交響曲第3番『ライン』、ブルックナーの交響曲第4番『ロマンティック』、そしてR・シュトラウスの交響詩『英雄の生涯』などの高貴でヒロイックな名曲たちです。そしてこれらの曲を特徴付けているのは、やはり英雄を象徴する楽器であるホルンの響きです。『英雄』でも、標準より1本多い3本のホルンが指定され、モーツァルト・ハイドンの時代の和声を補強する用法とは全く異なり、オーケストラの主役として縦横無尽に活躍します。一方で、英雄の孤独な内面を象徴するかのように、オーボエが全曲を通じてもう1人の主役を務めます。
今回は、ベーレンライター社から出版されている「原典版」の譜面を使用します。最近の原典版ブームで、曲の本来の姿を見つめ直そうという考え方が一般的になってきたのは確かです。例えば第1楽章の最終部分で、トランペットで高らかに吹奏される第1主題が途中で「消える」箇所は、最後までトランペットに旋律を吹かせるように改変するのが通例でしたが、本日は譜面通りに演奏します。
第1楽章の第1主題は「ドミドソドミソド」と和音を上下するだけの単純なものですが、そのシンプルな要素を徹底的に展開していくベートーヴェン得意の手法が確立されています。
第2楽章は悲痛な葬送行進曲です。長調に転じ仄かな光が射すのも束の間、断罪するような金管のシグナルで断ち切られます。
第3楽章の中間部のホルン三重奏は、ホルンの音域の上眼と下眼まで使い切った、今日でも大変に難しい譜面です。
第4楽章は、主題と10の変奏からなる変奏曲です。単純な主題が次第に熱を帯びて切迫したフーガとなり、そして最後に辿り着いた平静な境地を表すかのようにオーボエの歌が天に向けて響きます。(フルート・K)

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